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Halloween[小話(?)]
他サイトさんに影響されてみたり、小話的なものの練習台1号だったり。ち・な・み・に。ヒューリック組。
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言いだしは、現在は敵対勢力の曰く「流亡の鼠賊」の一員、ルイ・エドモンド・パジェス殿である。
曰く、「『ハロウィン』って知ってます?」

最初の応答は元同僚のミハエル・ワレンコフ。しみじみと頷いた。
「やりましたなぁ。辛気くさい軍でもそれなりのもんはあるもんです」
「祭にかこつけて、覆面で気にくわない上官、脅しにいったりね」
同じく同僚だったはずのファン・ヒューリックは奇妙に感心した声で、
「ああ、それであの季節には何度か、ベルティエ参謀長殿はおかんむりだったんだ」とのたまわう。
「提督はやらなかったんですか?」
「そう言えば、姿が見えんようでしたが?」
自由参加の、否、半ば軍規違反の一種の覆面パーティーである。点呼を取るわけでも無し。まして、ケルベロス会戦の英雄は三名のうちで最も軍歴も短い。
ヒューリックは指先で軽く頬を掻いた。
「この季節は飲み屋のねーちゃんたちが面白い服着てるし、お菓子持ってくだけでモテたしなぁ」
その際に払った、その他の金銭──酒代、席代、その他には敢えて言及しない。──

「懐かしいなぁ」
セラフィン・クーパースは最初の単語で少し遠い目をする。
「父さんが生きてた頃は、よくパーティーの演奏に呼ばれたのよね。あたしもおめかしして付いていったら、お菓子をたくさんもらったもんだわ」
 そういうのもタイタニアのせいで台無し、と小さく付け足す。

「去年までは、かきいれどき、ってんで、宇宙を飛び回って珍しいお菓子を集めて、今頃はさばくのにてんやわや、って感じだったねぇ。ねぇ、あんた」
ミランダ・カジミールは夫、コンプトン・カジミールを振り返る。声の出ない船長は穏やかに頷いた。
「ま、今年はそれどこじゃなかったけど、いいこともあったから、まぁいいさ」
正直爺さん号の船長夫人は、ひときわ豪快な笑い飛ばす。
「表に裏に?」
茶化すようなヒューリックに、もちろん、と応える。
「いろんな星系やら惑星やらに持ち出し禁止のお菓子、ってのはあるからね。高く売れるんだよ、そういうのは」

若くして元ヴァルダナ帝国軍の将官に上り詰めたサラーム・アムゼカール提督は、いっそ感心したように頷いた。
「下町が妙に騒がしい季節だと思っていたが、なにやら行事があったのか」
軍務に生きてきたアムゼカールには、あまり馴染みがないようである。

ふっ、と小馬鹿にするような笑いを漏らしたのは、ドクターの二つ名を持つリー・ツァンチェン。余人ならばともかく、彼のこの笑いはいちいち相手にしていては身が持たないので、だれも気にしない。
「低俗だな。ハロウィンとは、この本来、万聖節の前夜祭であって、菓子の出回る時期でもなければ、変装大会でもない」
「万聖節ってなんだよ…」
代表して声に出したのが誰であれ、全員に近い人々の思いの代表である。わざわざ訊ねて答えを待ってやるあたりが、この集団の人の良いところである。
「カトリック……かつて地球で最も勢力の大きかった宗教の聖人全てを祭る日だ。さらに遡れば、その宗教誕生前のケルトと呼ばれる地方の土着の収穫祭でもある。子供が魔女や悪魔、怪物に仮装してカボチャをくり抜いたランタンを持って大人を脅して回るのは、むしろこちらの流れだな。大人は子供らに菓子を渡すことで自らの災厄をともに悪魔へ押しつけようとする。菓子を貰った子供らは喜ぶし、野蛮だが精神的には合理的な行事だ」
「……やってることは変わらないじゃない」
セラの言葉に、これだから学の無い俗人は、と、偏屈な哲学博士はかぶりを振る。
「全ては宗教への信心あってのことだ。従って……」

「おう! 従って、俺らがそんなことをやる義理はない!!」
遊び事、お祭り事は大好きなはずのアラン・マフディーが、絶叫に近い声で珍しくも祭を否定する。
「どうしたんだい、マフディー。ちょっとくらいパーティーやろう、って……」
言いかけたミランダを、さらに珍しく彼は遮った。
「暢気なことを言うな! 俺たちに今、仮装パーティーなんぞやる金がどこにある。宗教やら祭りなんぞより、明日のパンと命だろうが! それに、俺たちは“あの”タイタニアに目をつけられてるんだぞ、騒いでる余裕何ぞあるかっ!!」

一口に「タイタニア」と言って、全てがアルセス伯や、彼らを追いかけ回したザーリッシュ公のような人物ばかりではない、ということは半数の頭には無い。激戦の末にザーリッシュ・タイタニアをどうにか撃退、死に追いやってから、未だ1ヶ月経たないのである。むしろ、報復戦が恐ろしい。
また、タイタニアの全てが対決したザーリッシュほど見境無くもなければ横暴であるはずもない、と弁えている者からも、反論が無いのは「金が無い」という、根本的な事実のためである。
ドクター・リーの自信はともかくも、現実には未だ、バルガシュ政府を完全に巻き込めるかどうかは全く不明であった。自らを学徒と自認するリー・ツァンチェンは、いかに自らの策に自信が在ろうとも、結果の出ていないことを確定とするほど愚かではない。


かくして、普段は軽く見られている会計担当に反論できる者はなく、星歴446年のファン・ヒューリック一党のささやかなハロウィン・パーティーは見送られることとなった。



【── END ──】


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……お粗末様でした。
ザーリッシュの横死は10月初旬だと思ったけど、あってるかしら……(汗)
ちなみにドクターの蘊蓄は暗記しているわけではなく、ウィキペディアを流し見しつつ、テキトーに記憶や解釈加えつつ……(^^;
プチ話は初挑戦。ツッコミ大歓迎。製作時間がおそろしいほど短い……いいのかな。

リアルですでに11月なのは気にしないで!
|2009.11.04 Wednesday | comments(0) | trackbacks(0) |
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