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Present from litell Princess[小話(?)]
ネタが浮かんだ頃にはクリスマスのネタとしてでも…と思っていて、結局、書く暇がなかった小話。舞台はラドモーズ事件後のバルアミーの左遷先、惑星ティロン。
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 こんな田舎惑星にもサロンじみた舞台は複数存在するのか、と、惑星ティロンに参事官として赴任したバルアミーは口には出さずに思った。知識としてはともかく、生まれてから十八年の人生のおおよそ中央を離れたことの無い、五家族に近しい、若い傍系子息には、漠然とした違和感を与えた。
 これは確実に偏見である、とは自覚している。そもそも、彼の参事官としての仕事の半数以上は、そうしたパーティーや何某かの記念式典等にタイタニア一族ないし一党の代表として参加することである。愛想を振りまく事が出来れば上出来であるが、それは未だ、この青年には難しかった。もっとも、その若すぎる年齢ゆえに、大きな支障を来す事はなかったが。

 さて。
 このバルアミー・タイタニア子爵は生来の環境や身分に比して、極端なほど私生活の環境や私物に無頓着である。放っておけば夜着の他は軍服だけで生活するし、私邸に在住していた頃は屋敷の使用人が勝手に用意した食事も、天空の城ウラニボルグでジュスラン公爵の副官として働き、その一環として小さな姫君に振り回されるうちに、市街地に出ればいくらでも可能であると学んだ。あとは、寝床とシャワー、デスクと仕事用の端末機があれば、彼にとっては充分である。

 この無頓着さから、彼の携帯する小さな端末機は長らく、保護カバーすら無く、取り出しやすく落としにくい服の隠しに裸のまま突っ込まれている状態であった。故障を早めるほどの物でなければ、外装の細かな傷など実用に何の支障もない。
 しかし、彼の小型端末機はティロン赴任の少し前から、ようやくに保護カバーに包まれる事になった。ピンク色の、可愛らしいレース編みの。
バルアミーの極端な無頓着さはここでも発揮され、これが与えられた頃には────あくまでも彼の基準で────使わないわけには行かなかったので利用される運びとなった。そして、今になってもそのままである。


 ティロンのサロン────政治家や大手商社の有力人物を中心としたパーティーや食事会等────にも婦人は存在し、彼女らの多くは好奇心旺盛で噂好きであることには、宇宙一の大帝国の中央も田舎惑星も変わりはなかった。そして彼女らが、若く、標準を超える容姿の新米参事官に、ただでさえ、興味を示さないわけがなかった。
 そんな青年が携帯する小型通信機が、やや拙い風情のレース編みの袋で保護されている。これに興味を示さないほど、ティロンのご婦人方は鈍くはない。しかし、若すぎるが故に固い風情のある、しかもタイタニアの性と子爵号をもつ青年士官に由来を問いかける勇気を兼ね備えた婦人は────多くはないが、一人二人はいた。

「どなたか良い御方からの贈り物ですかしら?」
 この場合の“良い方”とは通常、恋人を示唆している。その程度は、さすがにバルアミーにも判るが、真相は異なる。

 それはリディア姫がほぼ常に側にいた頃、バルアミーの持つ小型通信機の小さな傷の惨状を気にしたのと、彼女の世話をするフランシアが時折手にするレース編みに興味をもったのとが融合して生まれた、いわば十歳の姫君の手による初めての作品、というより、試作品に近い代物である。当然、粗はあるのだが、保護されるには違いないし、状況柄、小さな姫君からの下賜品を拒否することも出来なかったので、そのまま利用される事になった。

 その辺りの事情を知るよしもない、好奇心旺盛な婦人方の問いに、単純に肯定しておけば良い、という横着な発想は、妙に生真面目な青年にはとっさに出てこなかった。といって、事情の全てを説明する気にもならなかった。故に、彼はこう答えた。
「さる大切な御方からいただいたものですので」
 この返答の意味が相手にどう取られるのか、生真面目な若い青年には難しかった。

 ティロンのご婦人方の間では、バルアミー子爵には、やや不器用な恋人が居る、また、子爵はその拙い作品を愛用する、私生活では存外に優しい面を持っている、という噂は、あっという間に広がった。
 これに、政略結婚を狙っていて失望を覚えた若い娘を持つ政治家や商人が数名、もっと純粋に淡い恋心を傷の浅い内に終わらせる事になった年頃の娘が数名。


 バルアミー・タイタニア子爵の耳に、それらの噂や実情が入る事はなかった。彼のティロン在住期間は、いんちき戦争ポニー・ウォーから紆余曲折を経て派生した、全宇宙を巻き込んだタイタニア一族の内乱の序盤、ジュスラン公爵からの一通の書状で、ごく短い間に終わりを迎えることになったからである。



【END】
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知らぬは本人ばかり、というお約束。それに年の割にその手の話題には不器用な子ですから(と、勝手に認定)。
初期段階のタイトル候補は『Present for Dear My frend』と『Present for My Dog』の二択だったり……いくらなんでも後者は酷すぎだろう、自分。(バル君は毛並みの良いワンコだと思ってるけど(ぉぃ))
|2010.01.04 Monday | comments(0) | trackbacks(0) |
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