<< March 2024 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
PROFILE
CATEGORIES





ARCHIVES
<< はじめに−お話連載プレver. 概略 | main | こそっと…… >>
お話連載プレver. 第一回[お話連載(プレver.)]
はじめに−お話連載プレver. 概略』を未読の方は、是非、そこの注意事項及び公開意図を先に読んで下さるよう、お願い致します。



全体のタイトルも章分けタイトルもイマイチ浮かばないので、とりあえずこんなタイトルで。

冒頭の方向性の意味としては、これをやらないとたぶん、私ははじめられないんですが、本っっ当に、イントロの状態で、きりの良いところで切ったら、原作にいる人物が出てくる前にきれてしまいました。それでもいいよ〜、又は、しょーがねーなー、という積もりになれたら、下記へ。

-------お話本文-----

 惑星バルガシュへの遠征軍から駐留軍へ、そして宇宙の実質の支配者たるタイタニア一族の反逆者へと、めまぐるしい立場の変動があった人々の中で、最初に“その不可解”に気がついたのは、ヴァルダナ帝国軍の所属で、タイタニア軍の軍服を纏う、アリアバート艦隊旗下のリール・ドニック上等兵であった。

 彼の遠縁に、遠方の田舎惑星で病気加療中の老人がいる。本人にも把握しきれない経緯ながら、それなりの高給取りの彼が、老人の医療費の面倒を見ている。田舎惑星ゆえの不整備やネットワークの不都合多発等の事情で、遠縁の老人の病気加療の医療費は、辛うじて端末が使えるもの、定期的に手動で振り込む手はずになっている。
 タイタニア一族とそれに付随する人々の混迷の最中であろうとも、田舎惑星の老人の病状が世情に左右されるわけもなく、当然、医療費は必要である。星歴四四七年五月、世間も、惑星バルガシュ上に身を置くドニック上等兵個人の事情も混迷の最中ではあるが、彼は医療費の振り込みを試みた。
 試みても無理であろうから、その後に医療機関や親族に事情の理解と対処の要請をする段取りを前提としながらの、悪あがきにも似た行為である、と自覚してのことだった。
 なにしろこの時期は、イドリス・タイタニア公爵がタイタニア一族の首長代理として、彼の現在の上官であるアリアバート・タイタニア公爵、及び、同盟者とも呼べるジュスラン・タイタニア公爵の諸々の公的・一族指摘の権限剥奪を全宇宙に宣言した後である。
 反逆者とされたバルガシュ駐留側の二公爵はイドリス公爵を“君側の奸”として徹底抗戦の姿勢を見せた物の、所属管理やら給与振り込みだのといった、高位貴族の意識には入らない、俗な部類の詳細な管理権限は、当然、本国であり、惑星ヴァルガシュから遠く離れた、イドリス公爵の配下にあるヴァルダナ帝国、即ち、“天空の城《ウラニボルグ》”側にあること、自明の理である。
 少なくとも、ドニック上等兵の地位にあっては、その認識は当然、のはずであった。

 無駄足と覚悟しつつ、踏ん切りをつける為にも、彼の給与振り込み口座とリンクする、バルガシュ市街で稼働している銀行口座に手続きの申請をする。彼の予測する範囲内ならば、帰ってくる返答は、良くて口座凍結、悪くすれば抹消の上に個人資産すら没収、のはずである。なにしろ、彼の立場は支払い主の側から見れば今や“反逆者に与する者”なのだから。ただ、確認したかっただけ、である。

 だからこそ、ドニック上等兵の軍務振込口座が常のように動き、必要な現金が手元に届き、さらにはタイタニア一族支配からも見放されたような田舎惑星への振込も滞りなく行われたのは、彼にとっては“不可解な現象”であった。
 数日は用心した。どこかしらから、この動きに対しての捜査や尋問、あるいは拘束すら、有り得るのではないか。
 けれども、その気配は一向に訪れない。
 その段になって、ドニック上等兵は気心の知れた同僚に、その不可解さをこぼした。
 同僚は口の重い性質ではない。かつ、その場所は閉鎖環境とはとても呼べない、一般兵士の非番時の溜まり場と化しつつあった場末の酒場である。
 噂が広がり、試す者が現れ、増加し、しかし反応はドニック上等兵の場合と同じく、平時の通常通り。そして、噂はすでに噂の域を超えて加速し、広がっていく。
 規模が広がれば、下級兵士の噂も中級、やがては上層の耳に入る。
 こと、現金、すなわち、身分や階級、個人資産が下がる者ほど、生活に直結する話である。
 最上級の上層部に話が伝わるまでの時間は、ほんの僅かであった。


-------
あたりまえですが、続きます。
いきなりオリキャラ・ドニック上等兵。
|2012.04.21 Saturday | comments(0) | - |
コメント
コメントする